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家庭用の電気製品は、機器を設置して通電すればその時点から性能を充分に発揮しますが、オーディオはそうはいきません。コンポーネントを接続して音が出たときがスタート地点。第一声はまぐれでもないかぎり、いい音はしないため、そこから納得できるサウンドを求めて試行錯誤の長い旅が始まります。まさに音が出てからが勝負。オーディオは手塩にかけて育てあげていくものなのです。
そして、オーディオの主役は何といってもスピーカーです。音楽信号を空気の波、すなわち音に変換するスピーカーが本来の性能を発揮しないと、いい音は絶対に得られません。しかもスピーカーは、鳴らし方がきわめて難しい名うてのコンポーネント。性能や持ち味をうまく引出すには、作動環境の整備をはじめとするさまざまな対応策を施さなければなりません。
カーオーディオはさらに、スピーカーがユニットの形態で供給されるため車両への装着作業が不可欠で、その功拙が再生音に大きな影響を及ぼすことに加え、複雑な形状の車室空間や片寄った試聴位置、走行時の騒音等々、車載システム特有の問題も数多く抱えています。これらの問題点を克服すべく開発されたデジタル機能を搭載するコンポーネントも数多く存在しますが、それですべてが解決するほどカーオーディオは簡単なものではありません。それ以前に、これまでホームおよびプロオーディオを中心に、長年にわたって培われ蓄積されてきた技術やノウハウ、すなわちオーディオの基本が不可欠です。基本を無視して高度な水準に到達することなどありえないのは、オーディオに限らないことはいうまでもないでしょう。
このように困難なことが多いカーオーディオですが、その魅力についてはいまさら説明する必要はないはずです。メーカーの宣伝文句じみた表現になってしまいますが、よくできたシステムは車室内をコンサートホールのような音響空間に変貌させ、お気に入りのアーティストや演奏家があなたの好きなときに好きな音で、心ゆくまで音楽を堪能させてくれます。どこにでも自由に行くことができる究極のプライベート空間であるクルマの室内が、最良のリスニングルームに生まれ変われば、ドライブの楽しみも格段に増すことでしょう。
音がよくなるオーディオの魔法などありません。音は冷徹かつ公平です。人間の勝手な都合や中途半端な処置は絶対に許さず、いい加減な態度で臨むと、ひどい音を出してしっぺ返しを喰わせます。そのため小手先の対応を排し、愚直なまでにオーディオの基本に徹した姿勢を貫き、加工度が小さく飽きのこない音を追求して行きます。そして目指すは、どこまでも自然でありながら、瑞々しい生命感に溢れ、音楽と演奏の息吹が伝わってくるサウンド。音楽を真正面から語れる音作りに取り組みます。
なお、オーディオはフロントの２チャンネルをしっかり鳴らすことが最重要との信念から、総力の大半をここに注ぎ込むことになります。オーディオと音楽の奥深い魅力を理解し、ともに歩んでいける方をお待ちしています。
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